
大学在学中には起業への意識は全く無し。それどころか、自他共に「卒業できないだろう」と思われていたほどの『グータラ』っぷりだったという綾部氏。毎日パチンコ、ゲームをして過ごすという典型的なダメな生活を送っていたが、「オラクル社との偶然の出会いが自分を変えていきました」と語る。
「留年して4年になったとき、先に卒業してオラクル社に就職していた友人が、学校に会社説明PRに訪れていたんです。卒業できないだろうから関係はないけど、聞くだけ聞いてみるかと冷やかし半分で参加してみたら、自分の思う会社のイメージと違うし、新しくて面白そうな会社だな、と感じて、結果的には入社試験を受けることを決めました。面接を何回か受け、最終的に受かっちゃって(笑)。「やばい合格しちゃった!」ってことになりまして。「卒業できないのに!」って焦りましたよ。そこからは、教授の研究室を駆け巡って単位習得に必死で(笑)。すでに試験が終わっていたロシア語なんかは教授の前で教科書の暗唱などしてクリア。卒論もなんとかこなしたって感じでした」。
やっとのことで卒業した綾部氏だが、約10年勤務した日本オラクル社では、「研修ビジネス」→「マーケティング」→「コンサルティング部門」で様々な活躍を見せる。ここで綾部氏が心がけていたのは、「高い技術の提供」よりも「いかにクライアントの経営を効率良く回していくか」というコンサルタント的な視点だった。また、マーケティングの部門ではなんとなく自らの起業をイメージしつつ仕事にあたっていたという。
「技術寄りの仕事を好まなかったのは、自分がそんなにITに対して詳しくなかったというのもあるんですけどね(笑)。それと、コンサルティング部門の仕事が経営コンサルというより自社製品売り込みが目的だったということもあって、そろそろ転職かなと思い始めたのが10年目でした」。
ただ、名だたる戦略系コンサルティングファームにいまさら入社しても、新卒入社の人たちとはかなり差がついているのは明白。そこで勝負はできないだろうと思い断念。
縁があって、システム開発が主な業務の会社に入社した。そこで、コンサル専門部門を社内で立ち上げるに至る。いつも経営者目線でクライアントと接する綾部氏にとっては、このような業務を始めたことは自然なことだったのかもしれない。綾部氏のやりたいことが見え始めてきた時期だった。
「何事も順調に動き出すと飽き始めるという性格でして…。そろそろ自分で起業したいな、と思いはじめました。で、当時勤めていた会社とはバッティングしない「個人をお客さん」とする仕事を考え始めました。つまり、「BtoB」から「BtoC」に乗り出したんです。人脈も特技もない自分は、とにかくアイデアを出そう!と100以上のアイデア書き出しました。時間をかけ吟味して、最後に残ったのが『資格ビジネス』に関するものでした」。
まずは『資格取得』のノウハウを知ろうと、会社に籍を置きながら、中小企業診断士の勉強を開始。学習マップを活用する独自の方法も見つけ、これをブラッシュアップして現行の【通勤講座】にも活かしてるということだ。
※ 【通勤講座】とは?
KIYOラーニングが提供する、独自の資格講座。
教科は2011年8月現在「中小企業診断士」「宅建」「ファイナンシャルプランナー」の3つ。
いままでの資格講座は、分厚いテキストと広い教室で集合して聴講が一般的だった。
この勉強法を「リスニング」と「学習マップ」で行うという新しい勉強法を提唱している。
通勤電車の中で勉強できることから、【通勤講座】と名付けられた。
詳しくは→ KIYOラーニング【通勤講座】
「中小企業診断士の資格を取得して、すぐに講座(コンテンツ)を作りはじめました。録音専用の部屋も勤務先のすぐ近くに借りて、仕事終わると毎日こもってコツコツと…。
ひたすらコンテンツを作って、録音を繰り返した数ヶ月。この試作段階に、DGC社もコンテンツ制作に対しアドバイスを送っている。
「いちばんありがたかったのは、DGC社さんに優秀なスタッフを紹介してもらったことですね。特にウェブデザイナーと商材を売るためのウェブディレクター。この手の一般ユーザーを相手にするサイトでは、デザインや導線はとても大事ですからね。コストも交渉していただき、ずいぶん抑えてもらえて、助かりました」。
そして、サイトオープンから3ヶ月、なんと、週末起業家大賞を受賞するに至った。
「ダメもとでエントリーシートを書いてみたんです。スタートしたばかりのころだったから、まだ売上も大したことなくて、あまり自信はなかったんですが、大賞いただいちゃいましたね…」。
これに対しDGC社の早崎氏は「ビジネスモデルとして、お金を落とす仕組みやいろいろな伏線が設計されていたところが評価されたんだと思います。それと、売るためのフックが斬新なアイデアだったということ。個人が『教育ビジネス』をBtoCビジネスで成立させるなんて珍しかったのでしょうしね」と分析する。
そして、ついに独立へ。
「いつか辞めるだろうと思われていたので、会社の人に驚かれはしなかったですね(笑)」。
その後の【通勤講座】は順調にユーザーを伸ばし続け、コンテンツも「中小企業診断士」に加え「宅建」「FP」と増やし始めた。この際にも、DGC社がウェブディレクションを行い、今後コンテンツ(教科)の増減がし易い構造にサイトの修正・構築していったという。
DGC社の早崎氏は「一般的にSIをやられている会社さんは、このシステムを導入することにより、『お客様がいくら儲けられるのか、または、お客様がいくら経費削減をできるのか』、を明確に提案できる会社というのは少ない。弊社の場合は、お客様のビジネスがより発展するように、システム構築だけではない付加価値を提供し、Win-Winの関係を築かせていただいております。」と語る。
読者諸氏には、WEBでビジネスを起こしたいと思っている方も多いことだろう。綾部氏からアドバイスをいただいた。
「自分の場合は、古くから存在していた資格・通販ビジネスというものをWEBに乗せているだけなんです。旧来型な市場なので、ユーザーもその存在がWEBになったところで違和感を感じないんですね。つまり、新しいビジネスを始める場合は、確固たる市場が存在してるかどうかを考えるのが大事じゃないでしょうかね? 100億円の市場なら、その1%をもらえるかなと。そういう考え方です」。
「それから、完璧にやろうとせず、とりあえず動いてみて欲しい、と思っています。わたし自身、試行錯誤だったし、最初は小さくトライ&エラーを繰り返してきたわけですから」。
DGC社の早崎氏もこの意見に同意する。
「新しくビジネスをモデリングするにあたり、シーズ(Seeds)から始めるか、ニーズ(Needs)から始めるか。つまり、プロダクト・アウトかマーケット・インかで、とるべき戦略が変わってきます。【通勤講座】さんの場合は、市場がすでに存在して、ニーズやウォンツを十分にリサーチした上でのモデリングなので、堅いですよ。」
ただし、誰しもが「起業」への適性があるわけではないので、その点を見極めてほしいとのこと。組織の中でこそ能力を活かせる人がいることを知っておくべきだとも付け加える。
「スマフォ対応やYouTubeなどを使った講座のアイデアもありますよ。でも、急激に手を広げないようにしています。注力すべきところ、キードライバーを間違えないように、と思っています。現在、ファイナンシャルプランナーという3つ目の講座提供まで来たので、ほかの資格での横展開もできないかを考えている最中です」。
「我が社のミッションは、詰め込み教育ではなく、どうやったら学びやすくなるか、を研究してユーザーに提供していくことです。そこは追求していきたいですね。でも、プロジェクトを始めるのは好きなんだけど、続けるのが得意じゃないから(笑)。10年くらいで堅実な組織を作り、後継にバトンタッチしていけたらいいですね」。
写真/コデラケイ








